歌劇《フィガロの結婚》全曲 [DVD]



歌劇《フィガロの結婚》全曲 [DVD]
歌劇《フィガロの結婚》全曲 [DVD]

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収録曲:歌劇「フィガロの結婚」全曲,
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本当に「フィガロの結婚」は傑作!それ以外に言葉はないです。

 ポネル演出の映画版フィガロです。この手の作品としては、かなりの情報量を詰め込んでいて、これは映画版でこそできるものだと思いました。そこがこの作品の好悪を二分するでしょう。つまり、ポネルによる「フィガロの結婚」という名作中の名作の解釈が色濃くでていると思います。ポネルは「フィガロの結婚」がボーマルシェ三部作の真中に位置するものであること、あるいはこの作品が生まれた時代背景がどういうものであるのかなどを、ちょっとした場面の小道具、あるいは演技者の仕種にみられる演出によって示しています。それらは「フィガロの結婚」を知れば知る程、気付く部分が多くなっていくと思います。もちろんそれが妥当なものかどうかは別ですが、モーツァルトの素晴らしい音楽によって忘れがちになりかけるこうした問題点に気付かせてくれることも、私はポネルの功績ではないかと思いました。

 さて、音楽の方は素晴らしいの一言です。歌だけでなく演技も含めて、これだけのメンバーは現在では望めないかも知れません。特にフレーニとプライの二人は市民のエネルギーを象徴するかのようなスザンナとフィガロです。ケルビーノを演じるユーイングのチャーミングなこと。好奇心旺盛な少年?を好演しています。フィッシャー=ディースカウはこれまで声だけ聴いていると、うまいのはよくわかるんですけど、作りものの演技のような印象をうけていたのですが、この作品をみて評価が変わりました。ものすごく伯爵の人物像をうまく表現しているのに驚かされました。やっぱりオペラはみないとダメということですね。そして名歌手たちによるアンサンブルを支えたベーム指揮のウィーン・フィルの音楽の美しいこと!これを聴くことのできる贅沢はこの上ない喜びです。「死ぬということはモーツァルトの音楽を聴けなくなるということだ」とう有名な言葉は本当なのかな?と思いました。
最高の陣容だが失敗作

ベームにウィーンフィル、最高の歌手陣、天才演出家ポネル。にもかかわらず、これは大いなる失敗作である。映像と歌が合っていないと多くの人が指摘しているが、問題はもっと本質的な次元、すなわち、オペラの映画化で何が失われるのかという点にある。劇場ライブ版ではない映画版でも、フルトヴェングラー『ドンジョバンニ』のように、舞台を再現して成功した例もある。しかし本篇は、通常の映画のようなセットを組んで撮影し、原作の微妙なニュアンスを映像として表現しようとする。その結果、オペラと異質な原理が支配的になった。

最重要部分で、画面の歌手が沈黙しているのに歌が流れる。それは現実の光景ではなく心象風景であると言いたいのだ。例えば、第二幕冒頭の伯爵夫人のアリア(カヴァティーナ)ではキリストの像などが映され、第三幕の伯爵夫人のアリアでは、結婚直後の幸せだった昔の光景が、第四幕のフィガロのアリアでは、女を信じて苦しむフィガロとそれを笑って突き放すフィガロの二人が同時に映される。そして、スザンナと伯爵夫人が服装を最初から取り替えたために、スザンナのアリアの前半は伯爵夫人の像を遠くから映し、後半は、鬘を取って歌うスザンナの顔だけアップするという苦肉の策が生じた(ちなみに服装の交換の問題は現在でも解決されていない)。

オペラでは舞台で生身の歌手が歌い、我々の想像力が、歌われた光景をさまざまに描き出す。そこにオペラの生命があるのに、その一番大切な部分を、本篇では、映像が代わりにやってしまっている。映画は時空を越えた光景を描けるが、その自由さは諸刃の剣であることを、この作品は教えている。
ウィーンフィルの音色を心ゆくまで堪能!

この作品ほど、ウィーンフィル向きの音楽もそうはないと思いませんか?実際、CDでもウィーンフィルによるこの曲の演奏はいくつも出ていますが、残念なことに、このオーケストラの魅力がむしろ指揮者の個性によってうち消されてしまっているような演奏が多いように思われます。その点、このDVDで聴ける演奏は、隅から隅までまさにウィーンフィルならではの魅力的な音色!ああ、素晴らしきかなウィーンフィル、素晴らしきかなベーム!!もちろん豪華な歌手陣や凝りに凝った演出も、まさに完璧に理想的な『フィガロの結婚』のディスクといえます。それにしても、改めてこのような質のよい映画仕立ての映像でじっくり鑑賞すると、モーツァルトのこの作品が、音楽の美しさと繊細な心理描写という、ときには両立両不可能とさえ思える難題を、いかに見事に解決してしまっているかを痛感させられます。モーツァルトが天才中の天才だと呼ばれる所以は、まさにこのようなところにあるのでしょう。



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