聖戦ヴァンデ〈上〉 (角川文庫)



聖戦ヴァンデ〈上〉 (角川文庫)
聖戦ヴァンデ〈上〉 (角川文庫)

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虐殺を生み出したフランス革命の理念

フランス革命は、今も不当に高く評価されていますが、同時代のエドマンド・バーク、少し後のトクヴィルをはじめ、冷静に批判している賢人も多く存在します。
フランス革命は、理念のために、あまりにも急激に現実を変えようとし、自由を叫びながら、かえって強制、虐殺を生み出しました。その象徴ともいえるのが、いわゆるヴァンデ戦争です。

作者は、共和国側のジュリアン、王党側のアンリに焦点をあて、それぞれがどのような理念をもち、現実に向き合っていたのかを、描きます(ニコラは少し役割が小さい)。

貴族の名前は長く、フランスのなじみのない地名もやっかいではありますが、一気に読み通せます。

それにしても、作品では後景となっていますが、ロベスピエールの描かれ方は興味深い。悪いやつ!
分かりやすくて面白い!引き込まれる内容・・・

「聖戦ヴァンデ」は、同じく藤本ひとみ著
「ハプスブルクの宝剣」や「皇帝ナポレオン」
に匹敵する、すばらしく読み応えのある本だと思います。

歴史の好き・嫌いに関係なく、藤本ひとみさんの本は
堅苦しくなくとても読みやすい文章なので、
どんどん引き込まれていきます。 読みながら情景が頭に
浮かんできて、まるで頭の中で映像が回っているかのように
躍動感あふれる内容です。
読み終わってしばらくは、ぼぉ?としてしまうほどでした。

歴史の授業で、ただ「XX戦争」と習って覚えるだけでなく、
実際の戦争ではどんなことが起こっていたのか、
人間の心情やその背景がとても分かりやすく描写されており、
理解・納得できた新たな感慨も味わえました。
フランス革命の裏面に起った民衆蜂起を描く

フランス革命期、フランス北西部のヴァンデ地方で発生した民衆蜂起(ヴァンデ戦争とも呼ばれる)の顛末を、蜂起軍・革命政府のそれぞれに複数の人物を配し、両方の側から描いていく。
革命政府による重税、徴兵制導入などに反対する農民たちの反乱は当初、革命直後の混乱にも助けられ、政府軍を圧倒する・・・。やがて政府は鎮圧のため、反乱を起こした地域を焦土とし、そこに住む住民たちを徹底的に、数万人単位に殺戮し始める・・・(最後には捕らえた人々を女子供も含め船に詰め込み沈める、という極めて荒っぽく残忍な手法さえとる)。
貴族出身で近衛部隊の青年士官、のちに民衆から頼まれ蜂起側の指導者の一人となるアンリ、革命側として、ロベスピエールに心酔するナイーブな少年ジュリアン、庶民階層出身で革命前にはアンリの副官であった共和国士官ニコラなど複数の主要人物を革命側・蜂起側双方に配し、ロベスピエールといった革命側指導者層も登場する。
日本では知られることが少ない革命の暗部を、魅力的な登場人物を配し描いてあり興味深く描いていく。フランス革命という美名の下に起こった歴史上の悲劇と、望むと望まざると巻き込まれていく人々の非情な運命が印象的・・・。

“アンリは鞘を握りしめる”

 いつの時代、どこの国でも社会体制が
“ドラスティックな変化”を遂げるとき、混乱と流血は
避けられず、若い命は散らされてきた・・・。

 「フランス革命」。ヨーロッパ全土に渡ってが築かれてきた
強固な“支配体制”が覆されたこの未曾有の出来事は、
現代人からみれば「革新」のそれに違いないだろう。
 しかし、急激な革新は真の意味を伴わず、状況は身勝手に暴走する。

 物語の核となるーヴァンデの叛乱ーは、まさに革命の名の下に
暴走した、あるいは否がおうにもさせられた人間達の悲劇ではないだろうか。

 「アンリは鞘を握りしめる」

 身分の違いこそはあれ、「対等」の存在だったニコラを
進んで遠ざけざるを得なかった青年貴族アンリ。
 旧社会の恩恵に預かり20年の命と名誉を与えられてきた
がゆえに発するアンリの自己抑制と、
それと相反する人間としての本能的悲しみ=愛すべき友との離反=
がひしひしと伝わってくる言葉です。
第一部第二章のラストで4回も繰り返しでてくることで、
この若者の悲劇性が一層強められています。
“革命”が発起したこで定まった彼の運命に涙せずにはいられない、
とても印象的で大好きなシーンです。

 

 
フランス革命の影の部分

フランス革命といえば、王制の廃止に伴う大変革の時、
ただ単純にそんな風に思っていました。
しかし、本書を読んだとき、そんな簡単なものではないことに
気付かされました。
ベルサイユのバラなどを読んでいたわたしなどは、
フランス革命はそれで終わっていたような気がしたのです。

けれど、その後も大勢の思想者がギロチン台に上がったことも知っていましたが、
フランスがどんな風になっていったのかは知ろうともしませんでした。
本書を読み、戦争について深く考えされられました。



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